2.Eumundi

「こ、公園…?」「全部うちの庭だよ」

最初に訪れたギンピーの家は、比較的短期の滞在を好むホストだったこともあり(彼らはWWOOFerのことを、「労働力」というよりむしろ「世界の若者との出会いの場」として交流を楽しんでいたので、色々なWWOOFerに出会うことを好んだ)、できればしばらくここに…と思っていた私も、2週間後には次の場所へと移ることになった。

 

次なるステイ先はギンピーから電車で少し南下したところにあるユーマンディ。毎週水曜日と土曜日に大規模なマーケットが開かれる場所として知られるのどかな街だ。

 

ステイ先は、パーマカルチャー(※)の実践を目指しているという家で、まず、庭が広い。いや、日本人の感覚からすればもはやそれは果たして「庭」なのか?というレベル。

 

家の敷地一帯が、日本の“自然公園”級の広さなのだ。アヒルやガチョウの泳ぐダムがあり、鶏を飼い、水栽培でレタスやポクチョイなどの野菜を育て、賃貸できるような独立した建物もぽつぽつと点在している。「ひ、広い……! これは公園だ!」と当時は衝撃を受けたが、その後のホストたちも皆広大な敷地を持ち、私はこれが「オーストラリアン・スタンダード」なのだと知ることになる。

 

家の敷地の、ほんの一角。
家の敷地の、ほんの一角。

 

私にとってパーマカルチャーという言葉自体は「聞いたことがある程度」だったが、自然に近い暮らし方ということで、どこか憧れのような思いも少なからずあった。オーストラリアが発祥の地だというので、現地で何か学べればいいな、とも思っていた。WWOOF体験を通して、よくも悪くも私のパーマカルチャーへの印象は変化することになるのだが、それはもう少し先で述べよう。

 

ここでの私の仕事は、毎日2回のアヒルや鶏の餌やりと、敷地内の広大な庭の一角にある家の大掃除などがメイン。半年前まで人が暮らしていたというが、シロアリには食われているし蜂の巣や蜘蛛の巣は至るところにあるしで、終わりなき自然の威力を思い知る。

 

ホストはオーストラリア人のピーターと、フィリピン人のネニータという若い奥さん。ホストとともに過ごす時間が最初のステイ先よりやや少ない生活スタイルだったからか、たまにコミュニケーションがすれ違い、性格上の違いから“難しいなぁ…”と思ったことも多々あったけれど(まあそれはどこにいっても常にあるものだし、いろんな人に会えるから楽しいともいえる)、週末には「オープニング・ガーデン」といって公開されている美しいガーデンに車で連れて行ってくれたり、有名なユーマンディ・マーケットにも連れて行ってくれたりした。

 

オープン・ガーデンでのひとこま
オープン・ガーデンでのひとこま

 

ちなみに私はここでの2週間目にシドニーから来た友人と合流し、クリスタル・ウォーターズまでの計3数週間はその友人とともにWWOOFした。事前にホストの了承を得れば、そんな柔軟な旅もできる。

 

※オーストラリア発祥!「パーマカルチャー」とは? 

パーマカルチャーとは、「パーマネント」(永久的な)、「アグリカルチャー」(農業)、そして「カルチャー」(文化)から生まれた造語。持続可能な農業を基本としながら循環型社会を目指す考え方のことで、オーストラリアのビル・モリソン氏とデビッド・ホムグレン氏が1970年代後半に確立した。単にエコな生活、というだけではなく、植物、動物、建物、水、土、エネルギー、人々、都市と農村などのすべてを適切に配置し、地域全体として循環が成り立つようにデザインしていくという考え方。